ABOUT

カヌーについて

カヌーとは、幾千年の昔から、人々の移動の手段や狩猟、輸送の道具として使用する、水に浮かべる小さな乗り物です。スポーツとしてのカヌーの起源は1850年ごろに始まり、スコットランド出身の法廷弁護士で冒険家のジョン・マクレガー氏の著書をきっかけに普及・発展がなされました。日本においてカヌー競技の人気が高まり始めたのは1964年第18回オリンピック東京大会でフラットウォーターレーシングが正式種目として採用された事がきっかけで、今では数々のオリンピック選手を輩出している人気スポーツとなりました。

HISTORY

カヌーの歴史

01 カヌーの起源

カヌーは、幾千年の昔から、人々の移動の手段として、あるいは狩猟や輸送の道具として、海洋、湖沼、潟、河川などあらゆる場所で生まれた水に浮かべる小さな乗り物です。最も古いカヌーは6千年ほど前のユーフラテス川畔にある、シュメール人の王墓に残されているといわれていました。最近の研究によると同じ頃、極東アジアの北極圏から北米イヌイットの世界を経由して、南米に至るモンゴロイド系民族がカヌーに乗っていたとの報告もあります。いずれにしてもカヌーは人類にとって生活に根ざした最も古い道具のひとつであり、その歴史を知ることでも深い文化的な意味があります。

02 カヌーの形態

カヌーには、甲板の無いカナディアンカヌーと、漕ぎ手が座るコックピット以外は甲板で覆われたカヤックがあり、カナディアンカヌーには片端に水掻き(ブレード)の着いたパドル(舷に固定されていない一種の櫂)が用いられ、カヤックは両端に水掻きの着いたパドルが用いられています。カヌーはこのパドルを用いて艇を前進させるのですが、最大の特徴は漕ぎ手が艇の進行方向に向いていることです。

03 カナディアンカヌー・カヤックの語源

カヌーという言葉は、一般的にカナディアンカヌーとカヤックの両方が含まれるが、カナディアンカヌーのみをカヌーと表し、カヤックと区別する場合もあります。甲板の無いカナディアンカヌーは、カナダを中心とした北アメリカに留まらず世界各地で広く発達しています。クリストファー・コロンブスは、西インド諸島の住民が用いていた丸木舟をカノア(Canoa=カヌーの語源。「先のとがった」の意)という言葉で記録しています。一方、ベーリング海、アリューシャン列島から、北極海、グリーンランドにかけては現在のカヤックの原型といえる艇が用いられていました。カヤックという言葉は、カナディアンイヌイットの言語を語源としています。

04 近代カヌー競技の黎明

スポーツとしての近代カヌーは、19世紀中頃イギリスで芽生えました。1850年代から1860年初頭にかけてイギリスのテームズ川下流で、近代的な甲板のあるカヤックの原型が見られるようになりましたが、これを普及したのはスコットランド出身の法廷弁護士で冒険家のジョン・マクレガーでした。彼はその著書を通してカヌー人気を高めるとともに、レースやツーリングといったスポーツとしての側面から近代カヌーの普及・発展に寄与しました。因みに最初のカヌーレースは1866年にイギリスのテームズ川で行われています。その後、1924年にデンマークのコペンハーゲンで競技カヌーとしての国際組織である国際カヌー連盟(IRK)が設立され、1946年に現在の国際カヌー連盟(ICF)へと発展的に改組されました。第1回の世界選手権大会は1930年。カヌーがオリンピックに正式種目として採用されたのは、1936年の第11回ベルリン大会です。

05 日本におけるカヌー競技の発展

日本におけるカヌー競技は、1940年に開催が予定されていた第12回オリンピック東京大会の準備のため、第11回ベルリン大会のボート競技選手団がドイツ製のカヤック艇とカナディアン艇を持ち帰ったのが始まりです。1938年には日本カヌー協会が設立されましたが、第2次世界大戦の激化に伴い、その活動は自然に消滅し1940年の東京オリンピックも幻と化しました。戦後、国際カヌー連盟から離脱していた日本の復帰が認められ、1960年再び日本カヌー協会が復活しました。1964年第18回オリンピック東京大会でフラットウォーターレーシングが正式種目として採用された事から、国内のおけるカヌー競技は普及と強化の両面で大きく躍進したといえます。東京オリンピック開催後、日本カヌー協会は日本体育協会に加盟し、1980年に公益社団法人日本カヌー連盟へと法人化されました。また、1982年の島根国民体育大会から国体正式種目として実施されています。

06 オリンピックでの日本選手の活躍

オリンピックには、1964年の東京大会以降、日本が参加しなかった1980年のモスクワ大会を除いて毎回選手を派遣し、1984年のロサンゼルス大会では、カナディアンシングルで井上清澄が6位入賞を果たし、福里修誠・和泉博幸のカナディアンペアも8位に入賞しました。2004年のアテネ大会では、女子カヤックフォア(4人乗り)が女子選手としてはじめて決勝に進出したほか、世界選手権やワールドカップでも上位に入賞するなど日本選手の国際競技力は高まってきています。そして、2008年の北京オリンピックでは、スラローム女子シングルで竹下百合子が4位に入賞。フラットウォーターでは女子カヤックダブル500mで北本忍・竹屋美紀子が5位、女子カヤックフォア500mで北本忍・久野綾香・竹屋美紀子・鈴木祐美子が6位入賞と日本のカヌー競技オリンピック史上最高の成績を残しました。またこの北京オリンピックへ選手・役員14名の選手団を派遣しましたが、これは1964年東京オリンピックに開催国として参加した選手団と同数の選手団であり、高く評価されています。

07 レクリエーショナルカヌー

カヌーは、競技としてだけではなく、釣りや狩猟、キャンプ、渓流くだり、ツーリングなどレクリエーションとして広く愛好されています。レジャーとしてのカヌー艇は、安定性に富み初心者でも簡単に艇を操ることが出来ます。またカヌーは心身に障害を持つ方々にとっても楽しむことの出来るスポーツであり、日本でも障害者を対象とした「パラカヌー」が盛んになってきています。カヌーの魅力は、自然と一体化した中で自由に艇を操ることができる点にあります。また通常の目線ではなく水面に近い目線から景色を楽しむことが出来るのもカヌーの素晴しさでもあります。カヌーを通じ自然の素晴しさを再発見することは、あらゆるカヌーイストに共通したものです。近年エコツーリズムが注目されていますが、自然と一体化し、自然と共生するスポーツであり、レジャーとしても楽しむことが出来るカヌーが果たすべき役割は、大変大きいものがあると考えます。